Sigur Rosのライブをみてきた話と、そのほか
アイスランドのポストロックバンド、Sigur Rósのライブをみてきました。
感想そのものに入る前に、少しだけ。
この間、Twitterで流れてきた動画があって。
ドネツクのマリンカでの映像。
— かみぱぱ (@kamipapa_ro) August 22, 2022
時期は少し前のもの。
特に多く語る必要もない、酷い話だ。 pic.twitter.com/27RAKuZUjW
この動画をパッと見た時、花火か何かの動画かと一瞬思って「綺麗だな」と思ってしまった。よくよく説明を見てみたら、花火なんてどころじゃなくて、投下した先の地を焼き払う焼夷弾で、ウクライナのドネツク、マリンカでロシア軍が使用したものだと。
この曲を演っていたときかな。その焼夷弾の動画を思い出して。
なんか、轟音とか光の激しい明滅とかって、まさに戦場の光景の模倣的再現なんじゃないかと。それを、一万円払って、安全で涼しくてゆっくり腰掛けることができる有明の大ホールで見てる自分。もちろんSigur Rosの音楽は戦場そのものの音とは違って、限りなく計算されて作り上げられた芸術で……。安全圏に身を置いて楽しむなんてつもりはなくて、痛切な祈りや願いの発露かもしれないけれど。
この曲のタイトル"Kveikur"は「爆弾の導火線」という意味だそうなので、ある程度今の情勢を踏まえた上でセットリストに組み込んだのかもしれない。私なんかが考えていることをバンド側は既に通過して、咀嚼した上で演出方法を選んでいるのかもしれない。想像ですが……。
Takk Ukraine T-Shirtshop.sigurros.com
ウクライナ支援Tシャツ、物販に売ってなかったようで。日本でも売ってほしいよ。
知ることと搾取することの境目を注意深く見極めないといけない。安易に物語として消費しようとしてはいないか、分かりやすさに飛びついてはいないか……。
あ、あと本当に微々たる額ですがUNHCRに募金をしました。まだ忘れていない、ということを何か残したく。罪滅ぼしでしかないんですけど。
ライブ感想
セットリストはこちら。間に15分の休憩を挟む二部構成で、3時間近くの長丁場でした。これを各地回りながら公演しているメンバーの体力にまず脱帽です。観に行く方は一回、多くて数回だから「ツアーやって欲しいな~~」って簡単に思っちゃうけど、演者側の負担は大きい。人生をいただいているようなもんだな……と畏れ多い気持ち。
来日自体は5年ぶりだそう。ちょうどそのくらいの時期日本にいなかったんですが、確か滞在先でも公演をやっていて。でもその時は観に行かなかった。まあお金がなかったというのが大方の理由なんですが、キーボードのKjartan Sveinssonが不在だったというのも大きかったと思います。この人、キーボード/ピアノだけじゃなくてギターやらフルートも弾くすごい人で。私自身はバンドをやらないので正しいかは微妙ですが、ボーカルのJónsiに次ぐSigur Rósの音の柱だなと思っていました。
で、そのKjartanが今年から復帰して今回のツアーに参加しています。10年ぶりの復帰だとか。ありがたいなあ。
大好きなSæglópurのイントロのキーボードを生で聴けて胸がいっぱいです。よかった。
10代の後半にポストロックにずっぷりハマって、Sigur Rósもその頃に聴き始めて、今私は20代の後半なので、もうかれこれ10年近くSigur Rósを聴いていて。10年の間に大学に入って大学を出て就職をして転職もして結婚もして、かなり環境も自分自身も変わったんですけど、やっぱりSigur Rósの曲を聴くと未だに思い出すのは10代の頃のことで。文字通り家にも学校にも居場所がなくて、自分だけ孤独だと思っていた、そんな時に聴いていたのがSigur RósだったりMy Bloody Valentineだったりした。まあ今になって考えてみれば居場所がないと思い込んでいたのは自分の方で、周りは弾き出すつもりもなかったし、単なる独り相撲だったのかもしれないんですけど。でもやっぱりそれなりに寂しかったし、ここにいちゃいけないと思っていたし。
大人になってそれなりに周りとの距離感も掴めるようになって、なんとか自分で生計を立てることができるようになって、そうやって稼いだお金で今回のSigur Rósのライブとかに行けるようになったのは、本当に、よかったなっていう気持ちです。なんというか、あの頃の自分にやっと報いることができたというか。
10年間頑張ってよかったね~と思います。まじで。
Jónsiの声、生で聴いても音源のまんまでびっくりした。素敵な声。唯一無二。
大好きなInní mér syngur vitleysingurは今回演らなかったので、またいつか観れるように頑張ろうと思います。頑張るぜ